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A. (上記のような法制度の基本構造を説明のうえ、)どの程度、連邦・州におけるすべての官吏が超過勤務を行っているかに関する統計は存在していません。 Q. 超過勤務の主たる理由は何ですか?また、官庁や部署による違いはありますか?(たとえば、日本では、議会対応、特に議員の質疑や政府の答弁等にかかる準備が問題となっています。これは、議員からの依頼が夜になされ、公務員が早朝までに準備を行わなければならない、といったことがあるためです。) A. ドイツでも超過勤務には多くの理由があります。たとえば、一時的に相当な業務量の増加がある場合、例としては、ドイツが議長国としてG7サミットを開催する場合や、各行政部門で新たな課題に対応する場合、また、人員不足の場合や、非常時における警察の動員(例:G7サミット)、大規模災害の場合などです。 また、ドイツ官吏においても、部門に応じて、短期間のうちに対応を要する業務があり、このことも超過勤務の要因になっています。ドイツでも、議会においては、議員から連邦政府への政治的課題にかかる回答・説明要求が存在しますし、政府は質問状には書面で答える必要があります。ただし、ご指摘のような、夜通しでの準備のようなことは、ドイツでは一般には行われていません。もちろん、例外的かつ特に緊急の場合には、ドイツでも官吏が短期間に応答しなければならない事態が生ずることを排除することはできませんが。 Q. 一日の労働時間の限度時間ないしインターバル時間は遵守されていますか? ドイツでは、EU労働時間指令を基に、一日あたりの最高許容時間、また、24時間毎に連続11時間の最低インターバル時間が設けられています。また、所定の週労働時間は41時間であるため、日々の長時間労働は、限られた日にのみ問題となり得ます。もっとも、所定の週労働時間は、12か月平均での週当たりの労働時間であることから、一日一日をみると、確かに限度を超過することもあり得ます。ただし、この場合には、必ず(時間による)調整を要することになります。 Q. 超過勤務を理由とする健康問題はありますか? A. もちろん、個別事案において、超過勤務を理由とした問題が生じ得るということを排除することはできません。しかし、一般的に、時間による調整に配慮した別のメカニズム(たとえば、一年内に、所定の労働時間を超えた超過勤務に応じて勤務免除を認めるという原則)があります。さらには、次善のものとして、一定の要件の下で、時間による調整の代わりに、金銭による補償も問題となり得ます。 Q. フレックスタイム制度は機能していますか? A. はい。フレックスタイム制度は、連邦および州における多くの行政部門において、現在、通例(Regelfall)となっています。(以下、制度概要の説明) 【筆者コメント】 今回、筆者が労働組合に調査依頼をしたのは、「組合側」であれば、「タテマエ」よりも「ホンネ」として、制度の現実的運用における問題点がより回答に表れ易いであろうと考えたためであった。もっとも、実際には、―調査票の送付に際し、筆者は一定程度ドイツにおける制度を知っている、と前置きをしたものの―筆者が想定していた以上に、現行制度の説明と、それに沿って運用がなされている(特に、所定労働時間を超えることはあり得るが、基本的には、自律的・主体的な時間決定を可能とするフレックスタイム制度や勤務免除を通じた時間による調整、また、例外的な金銭補償によって適切に調整されている)、との回答にとどまった。あくまで推測の域を出ないが、この要因としては、以下が考えられる。 まず、そもそも長時間労働問題の次元が違うという点である(注8)。 筆者がかつて2014年に、ノルトライン・ヴェストファーレン州のとある地方都市で現地調査を行った際、インタビュー回答者から、官吏の長時間労働に伴う健康問題に関する発言があり、それが深刻化している旨が厳しい表情で語られたことを記憶している。しかし、詳しく聞いていくと、その内容は、「今まではあまりなかった超過勤務が、週あたり数時間に及ぶ事例が生じつつある」といったものであった。 もちろん、ドイツにおいても例外がないわけではなく、官庁や部署によって、より深刻な問題が存在し得る可能性は否定できない。また、上記の回答についても、それが当地では深刻な問題であることに変わりは無いであろう。しかし、日本における「異常な」働き方の常態化とは、やはり「次元が違う」ように思われる(本調査に際しても、特に、日本における国会対応の現状を踏まえた回答については、緊急対応あるいは夜間勤務が余儀なくされる局面ではないのに、なぜ、といった雰囲気が感じられた。日本における国会対応との関係では、時間的余裕、公務員による準備の内容・必要量等、いずれにせよ課題があると言わざるを得ない)。 また、労使双方における基本的感覚として、法令に定められている以上、違法ないし異常・例外的な運用が常態化し、かつ、それが温存されているということ自体があり得ない、あるいは、仮に制度が機能不全に陥っているのであれば、(フレックスタイムのような形での官吏個人の自律的・主体的な決定を可能とする意味での労働時間の柔軟化やEU法のような国際秩序への対応等も含めて)常に是正が図られてきた、という感覚である。この背景には、実質的な労使協議の存在もあるように思われる。 ドイツにおいても、日本と同様、官吏については、日本でいうところの勤務条件法定主義が採用され、その基本的労働条件は、議会ないし当局側の一方的決定による。もっとも、現実には、官吏においても、法令の準備段階での関与権(Beteiligungsrecht)(連邦官吏法118条)を通じ、法令の制定・改廃に際しては、労働組合の上部組織が事前に情報提供を受け、意見を述べることができ、実質的な労使協議が行われているほか、公務労働従事者のもう一つの存在である公務被用者に至っては、協約自治・争議権の全面的な保障の下で、官吏法令の制定・改廃に先行して労使交渉を行っており、その結果が基本的には官吏の労働条件にも反映されているのが実情である(注9)。 これら背景の下で、労働時間の問題に関しても、労使双方の立場ないし認識等を一定程度踏まえた法整備がなされるとともに、違法ないし異常・例外的な運用に対しても、一定の規制力が働いてきたということができるように思われる。そして、現在では、古典的ないし硬直的な労働時間法制の枠組みを超えて、フレックスタイムといった形で官吏個人の自律的・主体的な時間決定を可能にする枠組みも(適法に)広く用いられるとともに、後にみるテレワークについても、その実施・運用については労使合意が重視されるなど、労働者側が自律的・主体的に働き方を決定し、あるいは、その決定に関与できる枠組みもまた広まりをみせているのである。 5.ドイツ官吏における柔軟な働き方 フレックスタイムが一般に行われている現状については既に紹介したため、ここではテレワークないしモバイルワークに言及する(注10)。 【テレワークないしモバイルワークにかかる基本構造】 勤務上の理由が対立しない限り、モバイルワーク(Mobiles Arbeiten)に際しては、職場での労務提供義務(Dienstleistungspflicht am Arbeitsplatz)とは異なった形で就労することができる(労働時間規則10条)。 ※ テレワークにかかる詳細な制度設計については、以下の回答にもみられるように、(法定を要する労働条件とは区別されて、)各官署レベルで官吏と公務被用者が共に参画することのできる職員委員会(Personalrat:民間でいう事業所委員会〔Betriebsrat〕に相当)を通じた労使協議に基づき締結される勤務協定(Dienstvereinbarung:民間でいう事業所協定〔Betriebsvereinbarung〕に相当)において定められている。 【テレワークにかかるQ&A】 Q. 官吏は、テレワークによって就労することができますか? A. 官吏は、通常、テレワーク(少なくともその労働の一部につき、職場外の自宅でコンピューターを用いて行う就労形態)の承認に関する申請を行うことができます。この場合、使用者は、たとえば、コンピューター等の事務・仕事機材を提供します。テレワークの利用者は、就業時間中は連絡の取れる状態でなければなりません。 Q. テレワークの実施に際しては、どのような制度が必要となりますか? A. 労働時間規則10条がテレワーク、ないし、より広い意味でのモバイルワーク(職場外でのモバイル端末を利用した就労形態)に関連する基本的な事項を定めています。その詳細については、通常、勤務協定によって定められることになります。 Q. テレワークについて課題はありますか? A. 現在、公務部門の多くにおいて、テレワークないしモバイルワークに関する勤務協定が締結されていますが、勤務協定においては様々な観点を考慮することができます。たとえば、利用者に不利益な取扱いが生じてはならないこと、その利用を強制されてはならないこと、健康的な労働が保障される必要があること、利用者が「つながらない権利(Recht auf Nicht-Erreichbarkeit)」を有すること、データの保護・保守、災害・事故発生時の保護、申請・承認手続などです。 【筆者コメント】 かねてより、日本においても、公務員にかかるテレワーク等の就労形態が議論されてきたが(注11)、ドイツにおける議論の特徴は、民間部門と同様に、労使協議を前提とする勤務協定によって各官署の実情に応じた規律がなされてきたという点にある。日本の公務部門においては、現行法制の硬直性・労使自治への否定的態度も相まって、あくまでも当局側主導による形成が念頭に置かれてきたきらいがあるが、ドイツでは、法制度上も、各職場の実態に通暁する者の間での労使協議を通じて、それぞれの職場に合った具体的制度設計を可能にする枠組みが展開しているのである。日本においては、とかく公務員における労使自治につき、(少なくとも現行法上)広範かつ厳格な制約が維持されてきたところであるが、以上のようなドイツの実情は、日本においても改めて顧みられるべき視点を提供しているように思われる。 6.育児休業等について このほか、ドイツ官吏の育児休業に関する質問も実施したが(注12)、基本的に民間労働者と同様の規律がなされていること、また、日本で生じる(特に女性の)キャリア問題との関係では、妊娠や育児、更には、パートタイムやテレワーク等にも対応する、不利益取扱いの禁止規定(連邦官吏法25条)が対応していることなどの回答がなされた。 また、ドイツ官吏においては、時短ないし部分休業的なパートタイム就労も広く普及しており(注13)、フレックスタイムや超過勤務に関しても、パートタイム就労に対応した規定が置かれている(労働時間規則7条3項4文、連邦超過勤務補償規則4a条等)。 7.おわりに ドイツにおいて、日本の(少なくとも一部の)公務員にみられるような「異常な」働き方の常態化は一般的には生じていない、ということができるように思われる。 もちろん、ドイツにおける法制度ないし実態にかかる本格的な評価は、より慎重になされる必要がある。しかし、日独いずれにおいても、超過勤務を例外として位置付けている法体系の下(日本においても、超過勤務が許容されるのは、本来、「公務のため臨時又は緊急の必要がある場合」に限られる)、少なくとも、―法令の制定・改廃および各官署レベル双方の次元での―一定の労使協議を前提としたルール形成、また、自律的・主体的な時間決定・働き方を可能とする諸制度の整備・拡充、そして、労使双方ともにそれら制度に沿って(適法に)運用していく姿勢、また、それを実現可能にする環境整備といった(基本的な)観点は、日本でも改めて十分に顧みられる必要があろう。 プロフィール 早津 裕貴(はやつ ひろたか)金沢大学人間社会研究域法学系 准教授 1988年愛知県名古屋市生まれ。2011年名古屋大学法学部法律政治学科卒業。2013年名古屋大学大学院法学研究科実務法曹養成専攻修了。博士(法学)。名古屋大学大学院法学研究科特任助教、同特任講師等を経て現職。主な研究業績として『公務員の法的地位に関する日独比較法研究(日本評論社、2022年)』など。 注 近時の議論については、人事院「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会~中間報告~」(令和4年7月)も参照。(本文へ) ドイツにおける公務労働従事者の概要については、さしあたり、村松岐夫編著『公務員人事改革―最新 米・英・独・仏の動向を踏まえて―』(学陽書房、2018年)の第4章〔原田久ほか〕のほか、早津裕貴『公務員の法的地位に関する日独比較法研究』(日本評論社、2022年)の第1編を参照。(本文へ) 本報告では取り扱わないが、民間労働者にかかる労働時間制度の日独比較については、たとえば、近時のものとして、松井良和「最長労働時間規制及び時間外労働に対する補償のあり方について:時間清算の原則の実現に向けて」連合総合生活開発研究所『生活時間の確保(生活主権)を基軸にした労働時間法制改革の模索―今後の労働時間法制のあり方を考える調査研究委員会報告書―』(2022年3月)51頁以下参照。(本文へ) ただし、ドイツでは民間労働者についても同様の傾向がみられることにつき、時間による調整という観点が重視されていることも含め、松井・前掲注3)60頁参照。 (本文へ) Dazu näher vgl. z.B. Ulrich Battis(Hrsg.), Bundesbeamtengesetz Kommentar, 6. Aufl., 2022, § 87 Rn.3 ff.(Ulrich Battis).(本文へ) 12カ月平均での週当たりの労働時間のこと(労働時間規則2条12号)。(本文へ) ドイツ公務部門におけるフレックスタイムの運用や評価については、村松・前掲注2)182-183頁〔原田久ほか〕も参照。(本文へ) 村松・前掲注2)181頁〔原田久ほか〕においても、「高級職職員以外は、一般には残業を行うことがないようであり、その背景には、官民を問わず、正規の勤務時間内に与えられた仕事を処理するという基本的考え方があるものと考えられる」とされている。(本文へ) 前掲注2に挙げた文献の関連箇所のほか、特に労働時間につき、EU法との関係も含め、前掲注5参照。(本文へ) ドイツ公務部門におけるテレワーク・モバイルワークの広まりや運用、評価については、村松・前掲注2)183頁〔原田久ほか〕も参照のほか、諸外国、また、ドイツにおけるテレワークにかかる一般的な最新動向については、労働政策研究・研修機構「諸外国における雇用型テレワークに関する法制度等の調査研究」労働政策研究報告書No.219(2022年)参照。(本文へ) たとえば、人事院「国家公務員のテレワークに資する勤務時間の在り方に関する研究会報告書」(平成20年7月)参照。(本文へ) ドイツ公務部門における育児休業については、村松・前掲注2)184頁〔原田久ほか〕も参照のほか、諸外国、また、ドイツにおける育児休業等にかかる一般的な動向については、労働政策研究・研修機構「諸外国における育児休業制度等、仕事と育児の両立支援にかかる諸政策&#160;―スウェーデン、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ、韓国―」JILPT資料シリーズNo.197(2018年)参照。(本文へ) 概要については、前掲注2に挙げた文献の関連箇所も参照。(本文へ) ドイツの公務員に関する参考情報 図1:総雇用に占める一般政府雇用労働者の割合(2019年) 図2:中央政府の幹部職員における女性割合(2020年) 図3:中央政府における18-34歳の労働者割合(2020年) 図4:中央政府における55歳以上の労働者割合(2020年) 図1~4の出所:OECD(2021)Government at a Glance 2021 特集:諸外国の国家公務員の働き方 シリーズ第1弾「デンマークの国家公務員の働き方」 シリーズ第2弾「韓国の国家公務員の働き方」 シリーズ第3弾「ドイツの国家公務員の働き方」 シリーズ第4弾「フランスの上級国家公務員の働き方」 関連情報 海外労働情報 > フォーカス:掲載年月からさがす > 2022年の記事一覧 > 特集 海外労働情報 > フォーカス:カテゴリー別にさがす > 雇用・失業問題 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > ドイツの記事一覧 海外労働情報 > 国別基礎情報 > ドイツ 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > ドイツ 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > ドイツ 調査研究成果 調査研究成果の概要 プロジェクト研究シリーズ 政策論点レポート 成果の概要 研究報告書・レポート 労働政策研究報告書 調査シリーズ 資料シリーズ 労働政策レポート ディスカッションペーパー 英文レポート・国際共同研究 JILPT Report 国際共同研究・学会等 職業情報・就職支援ツール OHBYカード VRTカード キャリアシミュレーションプログラム キャリア・インサイト(統合版) 職業適性検査・職業興味検査 HRM(Human Resource Management)チェックリスト 研修実施マニュアルVer.1.0『ここがポイント!求職活動マインド~希望の就職を目指して~』 「職業相談の勘とコツの『見える化』ワークショップ」マニュアル Ver.3.0 厚生労働省編職業分類 職業レファレンスブック 職業ガイダンス資料シリーズ --> JILPTデータ・アーカイブ 国内労働事情 モニター調査 定点観測調査(企業・個人) 調査シリーズ・資料シリーズ 国内労働情報 その他の報告書・レポート 取材記事バックナンバー 海外労働情報 国別労働トピック 国別基礎情報 フォーカス 海外調査シリーズ 諸外国に関する報告書 海外統計情報 海外関連イベント 海外リンク 調査研究成果一覧 発表年別 研究領域別(研究体系トップ) 基幹アンケート調査 日本労働研究雑誌 ビジネス・レーバー・トレンド 労働問題Q&A--> 職業・キャリア関連ツール 雇用関係紛争判例集--> このページのトップへ 個人情報保護 サイトの使い方 ウェブアクセシビリティ方針 サイトポリシー 独立行政法人労働政策研究・研修機構 法人番号 9011605001191〒177-8502東京都練馬区上石神井4-8-23 Copyright c 2003- 独立行政法人労働政策研究・研修機構 All Rights Reserved.

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